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丸亀製麺がブランドカンファレンス開催で再認識。私たちは「生きているうどんで地域と世界を驚かすワンチーム」

2019年、トリドールホールディングスはグループを上げてのマーケティング強化に乗り出しました。国内外食市場の拡大や変革、グローバル展開の再加速という、従来からの経営目標を実現するべく打った一手であることは間違いありませんが、もう1つ重要な目標もありました。

それは、
今一度トリドールの理念やモットーをすべての従業員・関係者の間で共有し、再認識すること。

新たなマーケティング戦略の一環としてお客様や市場にメッセージを発信すると同時に、インターナルブランディング施策に注力して、共通の価値観でより強固に結ばれたワンチームとなっていく。
このことにトリドールは今、多大なエネルギーを傾けています。そこで、株式会社丸亀製麺の営業部隊を統括し、2019年に始まった丸亀製麺のブランドカンファレンスも指揮している代表取締役の山口さんに話を聞きました。
はたしてブランドカンファレンスが意味するものとは何なのか、について。

※2020年2月に取材した記事です。

私たちの本来のValueを、すべての関係者とともに再確認する機会が必要だった

森川 直樹
丸亀製麺は2019年に初めて全国規模のブランドカンファレンスを開催。今年2月に第2回を開催しましたが、そもそもの狙いは何だったのでしょう?
山口 寛
これまでにも全国の店長をはじめ、営業本部の社員が一堂に会する全体会議は定期開催してきました。丸亀製麺ブランドに関わる課題の共有や、解決へ向けた意思統一などを行っていたわけですが、トリドールがグループ全体のマーケティングやブランディングを再検討していく動きの中で、私たちもまた原点に立ち返ろうと考えたんです。「丸亀製麺の良さって何なのだろう」「私たちはその良さをどこまで伝えられているだろうか」といった根源的な問いかけを自らにぶつけ、今一度きちんと答えるべき時が来ている。そう考えた結果、生まれたのがブランドカンファレンスでした。
森川 直樹
対外的なキャッチフレーズに「ここのうどんは、生きている。」を用いた理由として、粟田社長は「原点回帰」というメッセージを発しています。根底に流れる思いはこれと同じということですね?
山口 寛
はい、その通りです。手づくりの品をできたてでリーズナブルな価格で味わっていただく。そのために全店舗で粉から毎日うどんを作って、お客様に食べていただくというのが丸亀製麺のブランドの中核ですし、トリドールという会社の基本中の基本でもあります。とりわけ、うどん生地は温度や湿度に左右されやすい繊細なものですから、品質がブレてしまいやすい。それでもこの難しい挑戦をすべての店舗が続けてきたことで、丸亀製麺は国内850店舗という破竹の勢いで成長をしてきたのだと自負しています。当然、ブランド価値の原点がここにあることを誰もが理解しているはずですが、その確認をどこまで徹底してやってきたのか考え直してみた結果、「今までは社員ばかりが集まってブランディングやマーケティングについて議論してきた」ことに気づきました。
森川 直樹
ブランドカンファレンスには各店舗の麺職人さんや運営リーダーなども参加。関東と関西の会場に合計1200名近くが集合したと聞きました。
山口 寛
「作りたて、できたての、生きているうどんをお届けする」のが私たちの真価なのですから、その担い手は営業本部の社員だけではありません。むしろお店でお客様に接しているパート・アルバイトも含めた従業員さんや、その土地の風土も考慮して最高のうどんを作っている麺職人の皆さんこそが、丸亀製麺ブランドを担っている当事者といえる。私たちが皆さんのことを、あえて「パートナーさん」と呼ぶようになったのも、こうした気持ちがあったからです。
森川 直樹
パートナーさんのはたらきがあってこそのトリドールですね。ここをはき違えてはいけないですね。
山口 寛
そうです。トリドールは「とにかくお客様にご来店いただき、売上が伸びて、出店が加速すればそれで良い」のではなく、「手づくり・できたての美味しさを一人でも多くのかたに味わってもらいたい」からこそ、丸亀製麺でもこだわりを貫き通してきた会社です。この当たり前すぎるくらい大切なことを、私たちが急成長の中で見過ごしていたのだとしたら、まずここから改めていくことがブランド再構築の第一歩。ですから、パートナーさんと社員が定期的に集い、ブランドとお客様の為になにをすべきか?を一緒に考え、語り、そしてもっともっと丸亀製麺ブランドを働き手である我々が好きになる場として運営していくのがブランドカンファレンスの最大の意義と言っても過言ではありません。

単なる全体会議ではなく、グループワークで議論と気づきを体感する

森川 直樹
2月には第2回のカンファレンスも行われたわけですが、会場では具体的にどんなことをしているのでしょう?
山口 寛
粟田社長や私が壇上に立って、丸亀製麺の現状や今後への展望などについて発信してもいきますが、カンファレンスのメインセッションといえるのは、会場に集まった皆さんに参加してもらうグループワークです。先日のカンファレンスでは来場者が最大10名程度のグループに分かれ、この5月に実施予定の店頭プロモーションを店舗でどう展開していくのかについて各々考えてもらい、発表してもらいました。
森川 直樹
それは、新メニューの作り方や売り方のコンテストのような形式ですか?
山口 寛
コンテストというとそのような形式をイメージされると思いますが、私としては「絶対にコンテストのようにしてはいけない」とさえ考えて実施しました。何より重要なのは、皆が同じテーマについて自由に、そして必死で考え、情熱をもって工夫を懲らしていく時間を共有することにあります。そもそも全国に850ある店舗でそれぞれにお客様の層や年代は違いますし、そもそも店の作りや混雑時の状況も違う。
森川 直樹
何が好まれているのかも異なりますからね。「お客様を幸せにする」うえでの正解なんてないとも言えますね。
山口 寛
おっしゃる通りで、実際、発表を見ていくと、商品をどう作り、どう見せ、どう提供していくかは、グループによって全然違いました。その違いを皆で同時に見ていくことにも大きな意味があります。グループ内で議論したことや、他グループが気づかせてくれたことの1つひとつが社員にとってもパートナーさんにとっても学びになっていくし、「一致団結してより良いものを追求している」という一体感につながっていけばいいな、と期待していたわけですが、その期待を大きく超えるほどの盛り上がりがありました。
森川 直樹
勝ち負けのある競争ではなくても盛り上がる、というのは丸亀製麺というブランドや、トリドールが提供するメニューというものに愛情やこだわりがあるから、ということですか?
山口 寛
愛情やこだわりを超えて、”誇り”に近いと思います。私も以前は個店の店長からスタートしましたから、カンファレンスに参加しながら、改めて当時のいろいろなことを鮮明に思い出す機会になりました。例えば、どこの店に行っても麺職人さんにはこだわりがあって、「私の作るうどんがどこよりも一番美味い」という誇りを持っているんです。
森川 直樹
たしかに、店舗ではパートナーさんから誇りをもっている”職人さん”の気迫のようなものを感じますね。
山口 寛
そうなんです。もちろん基本となるレシピはあるものの、粉と水、つまりイチからうどんを店内で作っていくわけですし、その土地の気候やその店の設備の違い、混み合う時間帯の違いも関わってくるわけですから、まさにそこにいる職人でなければ判断できない絶妙のタイミングやさじ加減というのがある。まさに生きた商品を扱うのが丸亀製麺ですし、「うどんで驚かせたい」という統一した目標を持っていることもあり、「こうやってお客様に驚いてもらおう」というモチベーションが常に高く保たれていました。
森川 直樹
山口さんの店長時代なんかもまさに職人といった感じでしたか?
山口 寛
当時の私自身のことを言いますと、とにかく不器用で要領も良くなかったので(笑)、自己嫌悪に陥り、思い悩んでいる時期がありました。
森川 直樹
山口さんでもそのような時代があったんですね。
山口 寛
恥ずかしながら(笑)そんなある日、店のスタッフから「仕事が楽しそうじゃないね」と指摘されたんです。あなたが楽しそうにしていないと、それがお客さんにも伝わるよ、というアドバイスだったんだと理解して、とにかくお客様に楽しく接していくことを心がけた途端、本当に自分も楽しくなって、この仕事にやりがいを見つけていったんです。カンファレンスの会場で再認識したのは、今でもこだわりの職人さんは大勢いるし、接客や店の運営で試行錯誤をしているスタッフも多数いるということ。そして、結局は「お客様をウチのうどんで驚かせた」「毎日、嬉しそうに店に来て食べてくれる」といった事が皆のモチベーションだということです。だからこそ、グループワークも自然な流れでヒートアップしていったのだと思います。

私たちのValueを評価するのはお客様。だからこそのCS重視

森川 直樹
売上No.1店舗の表彰のようなものはないのですか?
山口 寛
あります。ただし、売上No.1ではなく、ハイライトはCS(顧客満足度)No.1のお店の表彰です。もちろん、売上No.1も十分素晴らしいことではあるのですが、外食事業では立地がそれを左右してしまう面があります。一方、お客様の満足度というのは店が努力しなければ決して上がっていきません。努力した成果を讃えるという意味では、やはりCSNo.1のお店に達成感や誇りを感じてほしいと思ったわけです。
森川 直樹
売上は高いけれど、CSは低水準というお店も存在しますか?
山口 寛
あります。経営目線で言えば「売上もCSも同じように高水準」ならば言うことなしなわけですが、時には「売上は高いけれども、CSは低水準」という店も現れます。繁盛店の場合、努力を怠り、サボっているというよりも、スピードを上げていくことにかかりきりになり、ついつい接客等のクオリティが犠牲になったりするケースが出てくるのです。私自身の自戒の念も込めて言えば、営業に携わる人間は売上が大好きですから(笑)、へたをすれば「CSが低くても売上の良い店を優遇する」などということになりかねません。「そうじゃないだろ、トリドールは」という再確認の場にしていくことも、カンファレンスの重要な意義だと捉えています。
森川 直樹
「カンファレンスを実施したことで判明してきた課題」などはありますか?
山口 寛
反省すべき点がいくつも見つかりました。特に「活性化」というものに関わる部分が大きかったです。カンファレンスでのグループワークが大いに盛り上がっていたことは、先ほども話したとおり、非常に良かった点ですし、丸亀製麺らしさというものを私も含め、多くの関係者が再確認しました。しかし「実際の現場ではこうも盛り上がらない」という声を聞いたりもしたんです。ここまで繰り返し強調してきたように、トリドールでは「お客様をハッピーにする」ことを目指して、各店舗が味や接客において自由に工夫を凝らしていくスタイルを尊重しています。お店のスタッフが同じキャッチフレーズを繰り返し口にするような手法は決してしませんし、「こういうときはこうしなければいけない」というように細部まで入り込んだマニュアルを押しつけることもしません。味について言えば、各店の前向きな努力を信用しているからこそ、セントラルキッチンを持たない経営を貫いてもいます。
森川 直樹
PSやお店への信頼あってこその裁量の大きさですね。
山口 寛
しかし、ともすると「おそらくこれが正解だろう。これが会社側の求める型なのだろう」というものを想定して、自らを型にはめ込んでしまうケースも否めないというわけです。私も現場を知っていますし、トリドールの営業職も皆、最前線の現実を知っているからこそ、「いつの間にか、尊重されていたはずの自由度を自分たちで制限してしまい、それが原因で息苦しくなってしまいがち」な部分に納得したのです。もちろん、こうした傾向は一掃しなければ、さらなる成長はのぞめません。ですから、今後もカンファレンスだけでなく様々な局面で「店毎に自由に最善を求めていく」ことの重要性をアナウンスしたり、グループワークのような実践を通じて体感できる仕組みを確立していかなければいけないと考えています。
森川 直樹
丸亀製麺に携わるすべての人たちが、「生きたうどんでお客様を驚かせる」という原点を常に意識する。その実現のために、自発的に自由度をもって工夫を施し、挑戦していく姿勢そのものが「ブランド」につながる、という理解で良いですか?
山口 寛
はい、まさにその通りです。ブランディングというと、どうしてもキャッチフレーズを連呼したり、CMや広告のイメージを店でも押し出すことのように考えがちです。でも、トリドールや丸亀製麺の本当のブランド価値は、最前線で働くパートナーさんや営業担当者が「手づくり・できたての美味しさでお客さんに驚いてもらう」ことを目指して、生き生き働いている姿にあると考えています。
森川 直樹
経営理念にあるsimply for your pleasureの想いですね。
山口 寛
はい。新しいスローガンである「Finding New Value」は、新しい価値の創出に着目をしたものですし、それはグループを上げて取り組むべきことでもありますが、そのNew Valueをお客様に届ける時の気持ちは、これまでの経営理念である「Simply for your Pleasure」でなければいけない。お客様の喜びを最優先する集団が一丸になって初めてValueは伝わるし、それが私たちのPleasureになり、ブランド価値を世界中のお客様にお届けできるワンチームになれるのだと信じています。グループ内で最大のブランドとなった丸亀製麺が、こうして原点に立ち返りながら新しい挑戦をしていき、結果として数値的な目標も達成できたならば、それがトリドールのブランド創りにも貢献していくと思っていますし、今後もカンファレンスに限らず、様々な角度からチャレンジしていくつもりです。