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これからのトリドール、これからのマネジメント(後編)

トリドールが自らを「人材開発企業」と呼び、成果を出していくためには、あらゆる立場の者が「マネジメント」を意識し、共通の理解をもって繋がっていく必要があります。
そこで、本シリーズでは粟田社長をはじめ、いわゆる「トップ・マネジメント」の経営陣に「マネジメントのあるべき姿」や「マネージャーとなった者への期待」について語ってもらいます。今回は、鳶本 CHRO(最高人事責任者)と「肉のヤマキ商店」恩田社長の2人による“これからのマネジメント”の後編です。

<前回記事>これからのトリドール、これからのマネジメント(前編)

 

人材成長の新陳代謝がこのグループをより大きくしていく

逸見 理紗子
前回鳶本さんから、丸亀製麺にもまだ新しい挑戦の糸口はあるし、丸亀製麺が築いたトリドールの強みを活かせば、新しいブランド・業態でも次の奇跡は起こせる。という話がありましたが、恩田さんもそうお考えなのでしょうか。
恩田 和樹
はい。そこは私も激しく同感しています。
逸見 理紗子
では、そのためにはどういった集団になるべきなのでしょうか。
鳶本 真章
次々に新しいリーダーが登場してくるグループにならなければいけない、ですよね?
恩田 和樹
そうそう。そしてリーダーだった人間は次の新しい局面へ移り、また次の挑戦に全力をあげていく。
逸見 理紗子
まさに、恩田さんにとってのヤマキということですね。
恩田 和樹
その通りです。
鳶本 真章
山口さんが次期リーダーに育ったことで、丸亀製麺は新たなリーダーのもとで新たな挑戦へ向かうきっかけをつかみ、その座を譲り渡した恩田さんは思う存分にヤマキに集中できています。
逸見 理紗子
なるほど。恩田さんと山口さんはタイプが違う印象ですが、いま、丸亀製麺は山口さんのもとで様々な挑戦をしていますよね。
鳶本 真章
そうですね。同じ想いでつながっているし、そのエッセンスが今、ヤマキのみんなに降り注いでいますよね。やっぱり私は確信します。こういう人材成長の新陳代謝がこのグループをより大きくしていくんだと。
逸見 理紗子
山口さんは相当なプレッシャーだったのではないでしょうか。
恩田 和樹
まあ大変だったと思います。丸亀製麺には1つの成功の型みたいなものが既存業務に根づいていますからね。野球で例えると、どんなに素振りが上手でもそれだけでは褒めてもらえない。試合に勝ってなんぼなんです。
逸見 理紗子
前回、山口さんはスロースターターだったと伺いましたが、そんな中、どのタイミングで山口さんに次期リーダーになってもらうことを決断したのですか?
恩田 和樹
たしかにスロースターターで決して目立つ存在ではなかったけれど、それでもちゃんとある時期から違いを見せてくれました。私としては結構早いタイミングから「次のリーダーは山口さんだ」と決めていました。
鳶本 真章
私も恩田さんと山口さんの関係性を見ていて感じました。ああ、この人を次のリーダーとして育てているんだな、と。任せる意思決定の量が半端じゃなかったですから(笑)。ただ、今でも山口さんは「恩田色」が定着した丸亀製麺を引き継いで、大変なチャレンジをしなければいけないと思っています。
逸見 理紗子
引き継いだ上で更なるチャレンジを求められているのは、ますますプレッシャーを感じますね。
恩田 和樹
選手として、監督に言われたことだけ完璧にやっていても、それだけではリーダーには育ちませんからね。

 

“本質”を形にして、いかにお客様の喜びにかえていくか。「自分事」マネジメントとは?

逸見 理紗子
リーダーやマネージャーに必要不可欠なこと、それはズバリ、何だと言い切れますか?
鳶本 真章
これは私の持論でもあるんですが、何事も「自分事」として仕事やお客様と向き合うことじゃないかと思うんです。リーダーやマネージャーに限ることではないかもしれませんが、マネジメントする者には不可欠だと考えます。
逸見 理紗子
では、「自分事」とマネジメントはどういった関係性があるのでしょうか。
鳶本 真章
例えば「このお店に来てくださるお客様に喜んでいただくのが自分の使命だ」と強く心に刻んでいたら、それだけで誰もが次期リーダーへと育っていくはずなんです。
恩田 和樹
店長時代の私はもう「自分事」のカタマリでしたね(笑)。会社が「こうしなさい」と言ってきても、違うと思ったら「それ違います」と言い返し続けてきましたから(笑)。これが正解かどうかはわかりませんが。
鳶本 真章
いや、それでいいと思います。私自身、本部にいる人間の1人ですけれど、本部の言うことがいつも正しいなんて思うのは大間違いだと肝に銘じています。
逸見 理紗子
それには私も強く同感します。お客様に一番近いのは店舗なので、本部がすべて正しいという考えで動いていては、お客様の喜びのためにできることが狭まってしまいますよね。恩田さんは、本部のどういったことに「それ違う」と感じることがあったのですか?
恩田 和樹
本部からはチーフマネージャーらが店に時々来るわけですよ。そして例えば「品質向上と維持のためにこれをこうしてください」と言われたりする。ところが店長だった私は「いや待ってください。そのやり方もあるでしょうけれど、ウチはこういう事情もあるから違った手法で品質の向上を実現しています」と(笑)。そんなわけで、「言われたとおりのやり方に切り換えるわけにはいきません」と突っぱねたりしていました。大事なのは手段じゃない本質だろ、と。いやな店長ですよね(笑)。
鳶本 真章
いえいえ、まさにそれが自分事ですよ。本部というのは全体最適論として「こうあるべき」を考えるし、それはそれで、しっかり考えるのが仕事。でも、その全体最適のための手法が世界中にある1000のお店で必ずしもベストな手法だとは限らない。
逸見 理紗子
そうですよね。働いている人や周囲の環境、地域性など全く同じお店は存在しませんし、その時々に応じた手法があるべきですよね。
鳶本 真章
その通り。本部として期待したいのは、僕らがお願いをすることの本質を理解してくれる店長が、それぞれベストなやり方で「トリドールのあるべき本質」を形にして、結果お客様を大喜びさせることです。
これからトリドールがマネジメントの面で、教育していかなければいけないのは、恩田さんが判断して実行していたようなことを、皆ができるようになることだと考えています。
逸見 理紗子
それぞれのベストなやり方が必要だからこそ面白い部分がありますよね。
恩田 和樹
はい。お店を任されると、それまでの実績をキープして目標数値に到達させなければいけない。責任ある立場ですが、大変で面白くない仕事かといったら全然違います(笑)。「目標に行かなかった理由」ばかりを振り返って落ち込んでいたら、面白くもなんともありません。
逸見 理紗子
赤字店の建て直しを自ら志願したのも、そういった面白さを感じていたからということですね。
恩田 和樹
そうですね。「どうすればいいのかを考えて、実行していける」役割を楽しまずにどうするんだと思っています(笑)。「雨が降ったら売上は下がる。雨が降ってしまった。仕方ない。」ではなく、「雨が降っていたって、なにかやれることがあるだろう。」と挑戦できるから面白い。
逸見 理紗子
なるほど。最近の例でいえば、新型コロナウイルスの影響で多くの店がダメージを受けましたが、落ち込んでいる暇などなく、この環境下でもやれることに挑戦されていたと思いますが、まさにそういったことですよね。
恩田 和樹
はい。大企業のおひざもとにあった店舗からは、その会社の社員がテレワークになったため、ランチに来てくださるお客様が激減して、それで売上に苦しんでいるという報告もありました。もちろん、こういう現実をひっくり返すことはできません。でも、不調の理由を報告相談するのがマネージャーの使命かといったら、そうではないですよね。ですから私は「で、どう対策を打つの?」と聞き返すようにしています。状況に応じて「次のアクション」を起こすことがマネージャーやリーダーの使命のはずですから。
鳶本 真章
最前線で起きている苦境をはね返すのは、間違いなく大変ですよね。でも、だからといってお手上げ状態になっていいのなら、マネージャーやリーダーは必要ない。自分事として捉えていたら、それでいいと思うはずがない。ましてや、「コストを下げて価格競争力をつけて」みたいなマイクロマネジメントが打開策だというのならば、「そういう逃げ方をするのはトリドールじゃない」ということ。トリドールの何に誇りとか喜びを感じているのかっていう話ですよね。

 

失敗を恐れず、チームで果敢に挑戦し続ける。その先にあるものとは?

恩田 和樹
今、私自身は「ヤマキを、丸亀製麺を超えるビジネスにしてやる」と本気で考えていますし、そのためにはどうすればいいのか、というテーマを楽しみながら練っています。
鳶本 真章
常に「一番にする」と言い続けてきましたもんね、恩田さんは(笑)。
逸見 理紗子
ヤマキが丸亀を超える、それは興味深いです。
恩田 和樹
申し訳ないですが、隣の繁盛店をつぶすくらいでいい、なんてところまで本気で考えます(笑)。それを、何度かの失敗ではもろともせず、あきらめずに挑戦し続けていると、次第にお隣との差が埋まり始めたりします。
そうすると、その試行錯誤を経験したおかげでパートナーさんたちもみるみる成長するし、意識が前向きになって、チームが強くなっていく。これが面白いわけです。そうして勝利を得たなら、その自信がまた個人もチームも成長させる。そして次のリーダーも頭角を現し始めたりします。
鳶本 真章
差が100だったとして、一気に150稼いで逆転したら気持ちいいけれども、結局20くらいしか成果が上がらなかったとする。150を狙って20なんだから、失敗といえば失敗。でも、とりようによっては、100あった差が80まで縮まったのも事実。「あと80なら絶対に逆転できるぞ」とチームが盛り上がれば、それがバネになって本当に逆転勝利をつかむかもしれない。だから小さな失敗は恐れずに、どんどんチャレンジすべきなんです。
逸見 理紗子
そこが、トリドールの面白いところですよね。
恩田 和樹
そうなんです。トリドールらしさや、トリドールが果たすべきお客様への使命さえブレていないのならば、手法は自由に考えて戦って良い。それがこのグループの最高の面白さだと捉えています。なによりも自分が成長していく喜びを味わうことができる。そんな会社そうそうありませんよ。
鳶本 真章
そうですね。考えてみたら粟田社長も恩田さんも、みんな誰よりも成長願望が強いし、「そのためだったら何だってする」という覚悟がある。でも、本気で成長を手に入れようと思ったら、個人で戦っていても無理。マネージャーやリーダーという役割には、チームのみんなと戦える、というメリットがある。
逸見 理紗子
目の前のことに集中することは大切ですが、視野が狭くなって個人で戦ってしまっては、成長は遠のいてしまいますよね。
恩田 和樹
そうですね。チームで戦うのは一人よりもずっとやりがいがある。お客様の喜ぶ顔をたくさん見ることができる。
鳶本 真章
偉くなってお金持ちになるために働く人がいても全然構わないと思うけれど、それでは成長に限界が来ますからね。トリドールでしか手に入らない「お客様に喜んでもらい、チームのみんなと一緒に悪戦苦闘し、そうしてみんなで成長していく」という面白味を、どうか多くの人たちに実感してもらい、共有してほしいですね。
きっとそれがこのグループにしかないマネジメントなのだと確信しています。

自ら挑戦し続け、組織の変革に深く関わってきたお2人ならではのお話でした。
これからも挑戦し、変革し続けていくトリドール。
そこでマネジメントをする者に求められる姿勢とは、チームや次期リーダーの成長を見据えて考え、行動すること。そして、トリドールとして果たすべきお客様への使命を軸に、自ら手法を考え挑戦していくこと。さて、次回は丸亀製麺の社長と海外事業本部長に、“マネージャーとして意識すべき主体性”について語っていただきます。