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新卒社員の配属先はどう決まる?前代未聞の新しい取り組みとは。

就職氷河期では、志望企業に内定を獲得することがゴールだったという方も多いと思います。ですが、現代は志望企業に無事に内定を獲得することで終わらず、次は「希望の部署で働けるのか」を重視する内定者も多くなっていて、就活生の間で「配属ガチャ*」という言葉が使われているほどです。
そんな配属方法について、今年、トリドールでは新たな試みを開始しました。
今回は、新たな試みの内容とその背景について人事担当者に話を伺いました。
*配属ガチャ・・・入社時(特に新卒入社)の配属先が、自身の希望ではなく会社の意向で決められてしまうこと

 

新卒採用を本格始動して7年、ミスマッチが起こることが多かった

逸見 理紗子
今年から新卒社員の配属の決め方が変わったと伺いましたが、まず、なぜ変える必要があったのか、その経緯を教えてください。
浜田 薫
はい、大幅に変えましたね。ですが、これまでも毎年毎年、議論を重ねてきて、会社の状況や新卒の特性に適応した決め方に変えていたんですよ。
逸見 理紗子
よく「配属ガチャ」なんて言葉を聞きますが、そこまで考えてくださっていたとは・・・
浜田 薫
それぞれが思いを持って入社を決断しているので、毎年悩みます。
逸見 理紗子
そうなんですね。適性重視と伺っていたので、てっきり適性検査で淡々と振り分けられるのかと思っていました。
浜田 薫
基本的には「適性」を重視していました。ただ、適性検査一つにしても、様々なツールを使用してきたんです。でも、業態によって特性が違い、同じ業態でもそれぞれの店舗によって少しずつカラーが異なるといった、適性検査の数値では測りきれない部分があったんです。


人材開発課/浜田 薫
2016年入社。新卒対象の入社式・入社時研修のカリキュラム構築、PS店長/時間帯責任者研修の講師を担当。
その他は、LIFO・HEPライセンス取得。前職(航空会社勤務)での接客知識・技術を生かし、新卒・中途社員からカフェ業態を対象に接客サービス講習を担当。
現在は、組織開発部と人材開発課に所属し、国内外問わず、トリドールグループ全体がMVVでつながる強い組織を目指すために、経営理念・Toridoller’s Valueの発信施策を構築。次世代経営者や等級別の育成プログラムの構築に取り組んでいる。

逸見 理紗子
なるほど。ここ数年は新卒者が200人近くもいましたから、大変ですよね。2019年卒は、業態の希望調査も行っていましたよね。
浜田 薫
そうですね。適性を重視するとはいえ、もちろん本人の希望も考慮していました。第3希望までの中で、適性検査の結果や各業態の特性に合っているのかを人事で判断して決めていたんです。ですが、それぞれに配属できる人数は定められていますし、どうしても配属後にミスマッチが起こることが多かったんですよね。
山口 寛
正直のところ、配属のミスマッチによる新卒の早期退職者は、少なくはなかったですね。


株式会社丸亀製麺 代表取締役社長/山口 寛
2008年入社。丸亀製麺にて複数店舗の店長、マネージャーを経験後、営業サポート部にて店舗改善を経験。その後チーフマネージャー、関東営業部部長、本部長を経て丸亀製麺史上2人目の現場社員から社長に就任。
お客様のよろこびを第一に考え、どうすればお客様に満足していただけるか、店舗に行って自分の目で確かめることを心掛けている。

浜田 薫
そうなんです。第一希望の部署に配属されても、「こんなはずじゃなかった」という声も挙がっていたんです。
逸見 理紗子
本人が希望したのに、ですか?
浜田 薫
決して希望した内定者を責めているのではありません。そもそも実際の現場で働いたことがないのに希望を取ること自体が間違っていたんです。
逸見 理紗子
たしかに、お客様としてお店を利用するのと働くのとでは違いますよね。
山口 寛
そう。内定者のほとんどがお客様視点のイメージや「憧れ」で希望を出していたと思うんです。憧れの仕事に就けることは素敵なことですが、「何がしたい」という働く上で目指すものがないのに、憧れだけで希望の部署に行っても、思い描いていた姿とのギャップが生じてしまいますよね。実際に働いて業務を知ることによって、あるべき姿や何がしたいかが具体的に出ると思うんです。
浜田 薫
そうですね。初期配属の決定がゴールになってしまっていたのかもしれません。それで、内定者本人の長期的なキャリアを見据えたうえで、配属を決定しなければならないという意見になったんです。

初の試み。フレッシャーズエントリーとは?

逸見 理紗子
では、新たな試みについて、これまでと何が違うのか教えてください。
山口 寛
新たな試み、その名も「フレッシャーズエントリー」です。
調査票一枚で終わらせるのではなく、各部長に向けて自己PR動画を作成し、さらに面談を実施し、「なぜその部署で働きたいのか」「希望部署で何をしたいのか」といった思いを直接部長にぶつける場を設けました。
逸見 理紗子
「なぜ働きたいのか」を明確にするのは大切ですね。
浜田 薫
そうですね。その上で、最終的に部長が自部署にマッチしている人材を決定する形にして、以前のように人事側で判断するのではなく、本人の意思と事業部の意思の双方を尊重するようにしたんです。

社長、部長と新卒社員の面談の様子

逸見 理紗子
なるほど。しかし、本人の希望だけではこれまでのようにミスマッチが起こり兼ねないですよね・・・
山口 寛
はい。なので、部長は自部署を希望する新卒の研修店舗に行き、働く姿をチェックしていたそうですよ。
逸見 理紗子
実際に働いている姿が本質ですもんね。
山口 寛
その通り。新型コロナの影響で中止になってしまったのですが、本来であれば、希望調査を行う前に、希望の業態で実際に働く期間を設けていたんです。それも実施できていれば良かったんですけどね・・・
逸見 理紗子
そうなんですね!やはり、憧れだけではなく実際に働いてみて判断するのがベストですよね。
少し本題からは外れますが、なぜ4月から希望業態で働かずに丸亀製麺で研修することになったのですか?
山口 寛
やはり、トリドールの主軸業態である丸亀製麺でノウハウを学んでいただきたかったんです。入社前に丸亀製麺でアルバイトをしていて他の業態に配属になった新卒社員が、丸亀製麺にもう一度戻って、社員としてノウハウを学びたいという声もありました。
逸見 理紗子
なるほど。本部配属の中途入社の社員でも、初めは必ず丸亀製麺で研修があるのもそういうことですね。
山口 寛
そうですね。丸亀製麺の空気感、温かさ、本当にお客様のよろこびを一番に考えている部分を学んで、別の業態や間接部門に行っても、「お客様のよろこびのために」を忘れずにいてもらいたいんです。
逸見 理紗子
間接部門にいる人こそ、その思いは大切ですよね。今回、丸亀製麺で研修後にそのまま丸亀製麺の店舗運営を希望する社員も全員、部長と直接会って面接を行ったということですが、その意図を教えていただけますか?
浜田 薫
本人に、「自分で選択し、自らの意思で決めた。」という気持ちで、自立性を持って働いてほしいのが一つです。それから、部長と会って一対一でじっくり話せる機会ってなかなかないので、この機会に直接会って想いをぶつけてもらいたかったんです。

山口 寛
どういうキャリアプランを考えているのかを聞きたかったのが一番ですね。人材開発企業という目標を掲げて更に意識するようになったのですが、マネジメントをする社員は、自分のエリアの仲間にもっと時間を使うべきだと思うんです。だから、まずは部長が、仲間入りする社員一人一人と向き合い、初めの一歩から真剣に本人のキャリアを考えることが大切だと感じ、このような機会を設けました。
逸見 理紗子
今回、丸亀製麺で研修後に希望の業態を経験して、また他の業態を希望するかもしれないとなったとき、別の業態に行ってまた一から覚えないといけないのは大変ですよね。
山口 寛
そうですね。ですが、別の業態で働くことになっても、9月までに新卒社員が経験したことは、これからも必ず活きると断言します。
浜田 薫
たしかにそれぞれの業態でコンセプトが異なりますから、新しく覚えることは沢山あると思います。ですが、それも今回の狙いでもあるんです。
逸見 理紗子
狙い、ですか?
山口 寛
これまでは、丸亀製麺に配属になったら、しばらくは丸亀製麺で経験を積むことが殆どでした。でも、様々な業態でより豊富な経験をすることで、やりたいことの幅が広がると思うんですよ。
逸見 理紗子
たしかに、本人の強みにもなりますよね。更に、業態を超えてノウハウを共有することでグループ全体にも磨きがかかりますよね。
山口 寛
そうですね。ミスマッチを防ぐことも目的ではあるのですが、新卒社員に実務経験を通じてグループの各業態について学んでもらい、キャリアプランを自ら考え行動してもらうことが真の目的なので。

今後もどんどんチャレンジできるチャンスがある?

逸見 理紗子
今回、CX(Customer Experience)推進部や、プロモーターについても半年~1年間限定で配属の枠がありましたが、なぜ入社半年の新卒社員に向け、店舗運営以外の募集をかけたのですか?
山口 寛
すべてはお客様によろこんでいただきたい、店舗を良くしたいからです。
逸見 理紗子
どういうことですか?
山口 寛
どうすればお客様によろこんでいただけるかを掴むポイントは人それぞれだと思うんです。店舗でお客様と近い距離で、長い経験を積むことによって力を発揮する人もいれば、間接部門や違う部署に行くなど、あらゆる角度から学んで輝く人もいますからね。
逸見 理紗子
間接部門のエキスパートになってほしいというわけではないということですね。
浜田 薫
そうですね。本部勤務を希望する人もいて、それが悪いというわけではないのですが、外食で働く上での醍醐味は、自分がアクションしたことに対してお客様にすぐに反応していただけることですからね。
逸見 理紗子
間接部門では味わえないよろこびですよね。どうすれば目の前のお客様に満足していただけるかを常に考え、それを実践してよろこんでいただいたときの嬉しさって何ものにも代え難いですよね。
山口 寛
正にそうですね。
CX推進部については、お客様が店舗で何を体験し、何に価値を感じているのか客観的に追求していきます。店舗で何気なく行っていた行動が実はリピーターを生むきっかけになっているかもしれませんし、店舗にいて気づかないことに気づけるチャンスが沢山あると思うんです。そういった、お客様のよろこびについて多角的に考えることを、早い段階から身につけてほしいんですよね。
逸見 理紗子
1年目の経験ってその後の成長に大きく影響しますよね。
山口 寛
一番吸収できる貴重な期間ですね。プロモーターについては、とにかくチャレンジして成長の機会を設けたかったんです。プロモーターを経験した社員は、なんだか目つきが違うんです。
浜田 薫
そうそう。学生っぽさが残っていた社員も、プロモーターを経験するとぐんと成長しますね。なんでしょうね。あの違い。
山口 寛
プロモーターは転勤も多くてかなりハードですからね。慣れない環境の中、新店で初対面のパートナーさんに限られた期間でトレーニングしますから、店舗の未来を背負っているという責任感が強くなりますよね。
逸見 理紗子
なるほど。それは、フレッシュで元気な新卒社員こそ大抜擢ですね。
山口 寛
そうですね。若手にはどんどん挑戦してもらいたいですね。新型コロナの状況で時期は未定ですが、麺職人を海外に派遣する企画も進んでいるんですよ。
逸見 理紗子
海外派遣!海外志望の社員は多いので、応募が殺到しそうですね。後日詳しく聞かせてください。
最後に、これからもこのフレッシャーズエントリーは実施する予定ですか?
浜田 薫
はい。来年も実施したいと考えています。また、人材開発企業を目指す上で、フレッシャーズを単独で考えているのはなく、1人1人に向き合ったキャリア形成のチャレンジの機会を他にも提供していきたいと考えています。
山口 寛
これまでも真摯に向き合ってきましたが、「育成=新卒社員が店長やマネージャーに昇進する」と捉えていたために、本当にお客様のよろこびに繋がる教育ができていなかったのかもしれませんね。ただ目の前の数字や肩書きのための目標を一番に置いていては、成長できません。会社が変革し、人材開発企業として成長していくためには教育においてもアップデートが必要ですね。お客様によろこんでいただけることを一番に考え、それが心から好きだと思える人材をどんどん増やせるような教育をしていきたいですね。