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捨てられていたものが商品に生まれ変わる!? 食品リサイクル・ループの仕組みとは

深刻化しているフード(食品)ロス問題。
食べ物が当たり前のように手に入る時代。一方で、“もったいない”という思いまで捨ててしまっていませんか?
今回は、フードロスの現状、削減に向けた取り組みや私たちにできることについてCSRの嘉屋さんに伺いました。

深刻化しているフードロス問題、放っておくとどうなる?

逸見 理紗子
新型コロナウイルスの影響で、特に小売店や飲食店においては集客が読み切れずロスが増えるなど、「フードロス」が改めて問題視されています。そもそもフードロスとは、何を指すのでしょうか。
嘉屋 浩彦
フードロスとは、食品廃棄物のうち、食べ残しや期限切れなどにより本来食べられるのに廃棄される食品のことです。魚の骨や果物の皮などは含まれません。
日本では、年間約2,775万トンの食品廃棄物が排出され、そのうち約612万トンがフードロスにあたります。これを国民一人当たりに換算すると、一日にお茶腕約1杯分(約132g)に相当します。*¹

*1 農林水産省及び環境省「平成29年度推計」

逸見 理紗子
それは、もったいない。
嘉屋 浩彦
一方で、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量は、年間約390万トン(平成30年)。つまり、その1.6倍をフードロスとして破棄しているのです。
逸見 理紗子
その数字には驚きました。この状況を放っておくと食糧不足は深刻化する一方ではないですか。
嘉屋 浩彦
その通り。地球環境の悪化にも繋がってしまいます。
フードロスを始めとして、食品廃棄物を焼却するということは多量の水を含んだものを燃やすので、大量のエネルギ―を消費します。その他にも、食物を育てる、加工、調理するのにも多くのエネルギーを使い、食材や廃棄物の運搬にもガソリンなどを消費しますよね。
逸見 理紗子
なるほど。フードロスを出すということは、本来抑制しなければいけないCO₂を排出してしまったり、エネルギーの無駄遣いをしていることになるんですね。
嘉屋 浩彦
そうなんです。フードロスの問題に対し、もっと責任を感じ、自分ごととして行動しなければならないんです。

食品リサイクル・ループ(再生利用事業計画)って何?

逸見 理紗子
フードロスを抑制すべきと分かっていても、新鮮ではない商品をお客様に提供できませんよね。丸亀製麺だと茹で上がった麺は15分、おむすびやいなりは作って2時間の期限を過ぎたら廃棄。もったいないです。何か対策はできないのでしょうか。
嘉屋 浩彦
そうですね。でもやっぱりフードロスを出さないことが大事なので、まずは必要な分だけつくることが基本になりますね。
逸見 理紗子
より新鮮なものを提供するためによりできたてを目指すということでしょうか。
嘉屋 浩彦
もちろん、今でもお店では無駄が出ないように頑張ってくださっています。ただ、更に来客数の予測精度を上げるなど、「食」を扱う企業として責任をもって取り組みを進める必要があります。
また、どうしても出てしまうものについては、これまで、生ごみ処理機や油のリサイクルなど様々な取り組みを行ってきましたし、これからも進めていきます。
逸見 理紗子
では、今回認定を取得した食品リサイクル・ループの事例についてお話いただけますか?
嘉屋 浩彦
まず、食品リサイクル・ループというのは、飲食店や食品工場から排出されたフードロスを肥料や飼料などに加工して、農畜産物等を生産し、それを再び事業者が買い戻す仕組みのことです。
今回の取り組みを説明すると、下の図のように、①調理残さ等を②運搬し、③飼料化します。その飼料を④エサとして与えて育った採卵鶏の⑤鶏卵やその加工品の一部を、私たち外食事業者が買い戻し、調理してお客様に提供するという循環になっています。(図1)


図1 食品リサイクル・ループの仕組み
(トリドールホールディングス含む外食5社連携による飼料化の食品リサイクル・ループ)

逸見 理紗子
なるほど!大変興味深いです。トリドールが買い戻した鶏卵や加工品は、商品に使用されているとうことですか?
嘉屋 浩彦
実は、丸亀製麺の半熟玉子天の卵として使用されているんです。
逸見 理紗子
あの半熟玉子天にですか?
嘉屋 浩彦
そうです。不思議な感覚ですよね。今回のように自分たちが排出したものを循環させるということは、ストーリー性があるし、企業の責任を果たす上でも重要な取り組みであるので、素晴らしいことだと分かっていただけると嬉しいですね。

初の外食連携で認定取得。連携するメリットとは?

逸見 理紗子
次に制度について教えてください。認定を受けないと食品リサイクル・ループは実現できないということですか。
嘉屋 浩彦
そんなことはありません。この認定制度は食品リサイクルの推進のために行政がベンチマークすべき取り組みを公表したり、廃棄物を運搬する際の規制緩和が行われたりするものです。トリドールグループとしては、主務大臣から認定をいただくことでこの活動をより多くの人に知ってもらい、フードロス問題への意識を高めてほしいという思いがあり認定に向け取り組みました。おかげさまで、多くの紙面やネットニュースに取り上げていただきました。
逸見 理紗子
現時点で認定を取得しているのは全国で何件ほどですか?
嘉屋 浩彦
50例ほどです。認定を取得するためには、肥料等の製造量に見合った量をリサイクルできているかなどの厳選な審査があり、そう簡単に取得できるものではありません。外食事業者が連携して飼料をつくり取得したのは全国初なんです!(※2020年8月時点)
逸見 理紗子
すごいことなんですね!「連携」とありましたが、他社様との連携することによりどんなメリットがあるのですか?
嘉屋 浩彦
外食事業者が店舗の食品リサイクルを実施する上で課題としている“回収の非効率”が改善されます。今までは各社様がそれぞれお付き合いのある収集運搬業者様に依頼していたので、店がとなり同士なのにゴミの収集運搬は違う業者様ということが一般的でした。
逸見 理紗子
それでは、ゴミを収集する店舗間の距離が遠ければそれだけコストも時間も無駄にかかりますね。
嘉屋 浩彦
そうなんです。そこで、今回の例で言うと名古屋市内の近隣に位置する5社分の外食事業者の店舗から回収することで、ゴミ収集車1台あたりの走行距離が今までより短くなり、コストも排気ガスの量も節減できるというわけです。
逸見 理紗子
なるほど。人手不足と地球環境に対する問題が深刻化する中では、まさにこのような取り組みが必要となりますね。

今後の取り組み。私たちにできることとは?

逸見 理紗子
他の地域でもこの取り組みを実施する予定はありますか?
嘉屋 浩彦
もちろん、より多くの地域で実施しなければならないと思っています。ただ、今回は初の試みということもありますが、実現までに約2年間かかりました。ですから今すぐに他店舗でも実施するのは難しいので、少しずつ参加店舗を増やしていきたいと思っています。
逸見 理紗子
現時点で、当社の食品リサイクル率(再生利用等実施率)*²はどの位ですか?
嘉屋 浩彦
2019年度は14.2 %です。国が決めた外食産業の目標は2024年までに50%なので大きな隔たりがあります。私たちもまずは、2024年までに50%に、2025年には55%になるよう進めています。

*2再生利用等実施率 = その年度の(発生抑制量+再生利用量+熱回収量×0.95※+減量量) ÷ その年度の(発生抑制量+発生量)
熱回収については、省令に定める「熱回収の基準」を満たす場合のみ算入できます。また、食品廃棄物の残さ(灰分に相当)率が5%程度であり、この部分は利用できないことを考慮して0.95を乗じています。
(出店:農林水産省食品廃棄物等の再生利用等の目標について)

逸見 理紗子
目標達成に向け、店舗でできる事は何ですか?
嘉屋 浩彦
リサイクルして肥料や飼料になるので、ごみの分別が大切ですね。また、冒頭でもお話しした通り、そもそもフードロスを出さないことが重要です。店舗で排出されるフードロスの多くが、事前の調理量が実際のお客様数を上回ってしまうことで発生するものです。
逸見 理紗子
「お客様をお待たせしていけない」という思いから、多めに調理してしまいがちですよね。
嘉屋 浩彦
そう、そこが一番難しいところでもありますね。
逸見 理紗子
とはいえ、人の目利きで来客数を予測するのは限界がありますし、フードロスを抑えることに目が行って調理量を最低限に留めるのもよくありませんよね。
嘉屋 浩彦
そうです。その対策として、来客数や注文数を予測できるシステムの導入を検討しています。また、モバイルオーダーや省エネ釜もその改善策の一つですね。
フードロス削減に向けた取り組みは、まだまだ始まったばかりです。私たちにできる事は沢山あるはずです。
逸見 理紗子
店舗で働くとき以外にも、フードロス削減に向け取り組む必要がありますよね。
嘉屋 浩彦
そうですね。食べ残しをしないことや調理時に無駄が出ないように切る、皮を剥くこと、大根の葉っぱやブロッコリーの芯なども使い切るなど意識する必要がありますね。
逸見 理紗子
簡単に食べ物が手に入る環境では、こういった意識は徐々に薄れていきますよね。
嘉屋 浩彦
そうなんです。最初はもったいないと思っていても、徐々に捨てることに抵抗がなくなってしまう。そういった習慣が、食糧不足や環境負荷の深刻化に繋がってしまうんです。
逸見 理紗子
そうですよね。フードロス問題に対してもっと意識して行動すべきだと改めて考えさせられました。
嘉屋 浩彦
その意識が大切です。どれだけフードロス削減に関してCSRから発信しても、みんなの意識が同じ方向を向いていなければ、何も実現できませんし効果も得られません。私たちは「食」を扱う企業として、つかう責任、つくる責任を持って行動すべきなんです。手元の食材には、貴重な資源やエネルギーが使われています。食材への感謝を忘れず、フードロスを出さない、出てしまったものは資源として活用することが当たり前という考えのもと、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきたいですね。

食品リサイクル・ループ認定取得
トリドールホールディングス嘉屋 浩彦(写真左)Save Earth Foundation 髙部 和幸 様(写真右)